此処に立ったとしても
彷徨う人波に身を投じても
何処で涙しようとも
この街は眠らない

耳を打つ異国の調
異形の為せる紅い過去
突き付ける現実の痛みに
目を背けても、雨は止まない

呼吸するだけ無駄な程
息継ぎの仕方を忘れてしまう
目を閉じるだけ無駄な程
意識は張り詰めた弓の弦

もはや逃げることはしない
何処にでも連れて行けと差し出す指先
形にならぬ想いはまるで
出し損ねた引き出しの奥の手紙のよう

異邦人の夢は淡く揺れて
身を知らしめる雨が今宵も冷たい


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